葬儀改革寺院連合(仮)代表の永正寺住職が、長年積み重ねてきた、一見するだけでは分からない寺院運営の工夫やこだわりを分かりやすく紹介するブログ。

山門は三文の値打しかないか

2005年の永正寺開創500年記念で 山門を作ることとなり
入口で 実用性はせいぜい雨が降ったときの 雨宿りに重宝程度 と思い 三文の値打があるか
と疑問に思いつつ 形だけでも作れば と始まったのが取りかかりでした。

しかし 各地の山門を見学すると 耐久性 耐震性 どこでも同じパターン ということが
気に入らなくて 普請道楽の本性で 21世紀初頭の山門として 歴史に残り文化財の指定を
うけるに相応しい山門 日本江南永正寺に相応しい 新形式の山門を作ることとしました。
30年余の付き合いの千田陞末棟梁の独自の設計で 東濃檜の官材 国有林の無節の木材を使いました。

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寺の山門は 普通柱の屋根からの雨が落ちて跳ね返った水による腐食を防ぐため「基段」という
30センチから50センチの高さの上に 柱が据えられます。しかし基段の高さが バリアとなり
門を通る時 登ったり下りたりをしなければならず それを避けるために 門の隣に フラットな
別入口を通用口として作る場合がありました。
 せっかく作った門をくぐらないで その門額や彫刻などは見ないで通用口から出入りするのでは
それこそ 三文の値打 と言われそうです。
 永正寺の場合 山門脇の通用門のスペースはなく 柱の対水性は保ちいし バリアフリーで
車いす 自転車も通りたいし という課題を解決するために 新しい考案をしました。
 基段は入口の石畳と同じ高さで作りますが 6個の土台石を50センチ上げて その上部に
円形に作った礎石を刻みました。柱の高さは50センチ 短くて済みました。門の入口の
縦横のバランスもとれました。

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 耐震性を考えて 六脚門とし 柱の太さを30センチ程度と太くして なお風景になじむように
丸柱としました。この3本の柱を貫でつなぎました。
 屋根は単純に本瓦葺だけにして 下り棟などの余分な装飾をやめ 棟のそり 瓦のそりがすっきりするようにしました。屋根の軽量化を意識して 引っかけ瓦を採用し 筒瓦丸部分は漆喰で固めました。
 化粧垂木は 費用はかかるものの 二重に垂木を重ねないで 一本で通しました。
 扉は あっても開きっぱなしのまま 閉めない場合が多いので お寺の開放感
を演出するために 無しとしました。 山門のこの用材の品質にそろう扉とするならば
 一枚500万円の欅の1枚板の扉 2枚で1000万円が必要ですが これ以上予算がなく
1000万円の節約が本音です。
山門に扉と段差がなく 山門へ通ずる参道両脇の松並木の 松の緑が
屋根の一部だけを見せています。厳めしさが減り まっすぐ続く参道が
ストロー効果を演じて とても入りやすくなっています。参道は緩やかな勾配が
続き 入口に立って 山門を眺めると 目線の中央に山門の基礎が見えるように
300年も前、当時の檀家さんが もっこを担いで土盛りしていただたおかげです。

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禅宗寺院の山門の厳めしい風情を守りながら バリアフリー化という
時代の要請にも応えるという難しい課題をクリアーしました。
永正寺の顔として 相応しくなりました。
山門工事は 木野村棟梁が担当されました。設計者の堂宮大工 千田陞末氏の弟子です。
材木を製材して 寸法に合わせて荒削りして 乾燥してからもう一度 削りなおすという
二度手間をかけています。建築後8年になりますが 木の乾燥による 狂いがありません。

千田棟梁の言葉 
「大工の腕は予算を増額させることにある お金をかけなければ 良いものは出来ない」

設計書ができてから 各社に見積もりを依頼しましたが 約1000万円高い
最高額を見積もった 木野棟梁の会社に依頼することとなりました。

その総代会の千田棟梁の発言
「4000万円の宝石がほしければ 4000万円を出せ。
3000万円では4000万円の宝石は買えない。」

山門の用材は木曽檜で その価格は 中心の髄の部分だけを使うのと「白太(しらた)」を含めて使うのとは
まったく価格が違います。
その差は職人さんの じぶんがつくった山門 という プロ意識 にかかっています。
30年余の付き合いの 千田棟梁の職人気質が永正寺に 自分の作品を残す 職人としての誇りが
この山門ができた最大の要因です。幸田露伴の「五重の塔」に描かれた職人気質のままです。 

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